
「3つ質問があります。
①救急車に載っている半自動式除細動器は種類が別れていますが、どういうのをよく使われているんですか?
②救急車に積んである半自動除細動器と一般市民が使うAEDに違いはありますか?
③救急隊員(救急救命士)以外にも半自動除細動器は使えますか?」
こんな質問にお答えします。
- 救急車積載の半自動式除細動器がわかる
- 半自動除細動器とAEDの違い
- 結論、救急隊員は一般市民と同じ位置付け
わたしは元救急隊員として、救急隊員の指導に携わってきました。
その中でAEDについては、非常に重要な救急資器材として認識してもらえるよう指導してきました。
なぜなら、救急隊員の必須ツールだからです。
この救急資器材をどんなシチュエーションでも使いこなすことができなければ救急隊員として活動していくことはできません。
ですので、わたしはこれらのことも広く周知できればと思い記事にしました。
それではいきましょう。
救急車積載の半自動除細動器がわかる

半自動除細動器は、医師、看護師、救急救命士などの医療従事者が、心電図を見て任意のタイミングで解析ボタンを押し、機器が電気ショックの可否を判断します。
https://inoti-aed.com/defibrillator/)
上記引用のようなものが半自動除細動器です。ポイントとなるのは下記の点です。
- 電気ショックの判断は自動で機械が行ってくれる
- 心電図解析は実施者が任意で解析することができる
- 心電図を実際にディスプレイでみることができる
ここからは、救急車に積載している大手メーカーの半自動除細動器を紹介します。これは実際に救急車に積載してあり使用したことのあるものです。
(救急救命士で消防署に働く息子も救急車で使用していると話していました。)
日本光電 半自動除細動器
特長
- ディスプレイ表示が見やすい
- 日本製だから取扱説明書など読みやすい
実際に使用した救急現場での生の声
【メリット】
✓普及率の高い日本光電製
⇒日本光電製品はAED普及も全国的に浸透している。つまり除細動パッドの互換性も高い。
✓携行しやすい
⇒重量は他のメーカーよりも軽い。実際に使ってみて実感。
✓SPO₂センサーも搭載
⇒現場でバイタルサイン測定を行うのに便利。
✓心電図の印刷が簡単
⇒これは救急隊員目線の話です。ほとんどの半自動除細動器は、印刷するのにSDカードを使用してパソコンにダウンロードして印刷することが多いです。
しかし、近年の日本光電製の半自動除細動器ならBluetooth機能によって印刷をわざわざSDカードに取り込む必要もないのです。
一般の方にはなかなか伝わりづらいかもしれませんが、心肺停止傷病者を搬送した後の書類作成は多岐にわたります。
そして、実際にわたしたちの行った処置・判断の担保になるのも心電図波形です。
例えば、除細動が必要な心室細動波形であったのに電気ショックを行わなかったなどです。
ですので、波形印刷はとても重要なことなのです。
それなのに、CPA救急出動から帰署後に出動は続くことなんてよくあります。素早く波形印刷できるのは事務簡略化のひとつ手助けとなるでしょう。
【デメリット】
印刷する際にひと手間かかる⇒慣れていないと印刷するのに手間がかかってしまう。SDカードで印刷する場合、連続波形印刷はできない。印刷したい部分だけを選択して波形出しするようになる。
旭化成 ZOLL
携帯型モニタリング機能付除細動器「X Series」
特長
- 頑強で破損の可能性は低い
- 東京研修所(エルスタ東京)でも採用されている
実際に使用した救急現場での生の声
【メリット】
✓東京研修所(エルスタ東京)でも採用されている
⇒エルスタ東京は年間で500人養成しています。つまり、多くの救急救命士がZOLLの半自動除細動器を認知率も高まります。
こういった大規模な施設で使用しているということは、他の教育施設や消防本部でも導入されやすいです。
✓血圧測定・SPO₂センサー・心電図モニターを測定できる
⇒携帯型モニタリング機能付除細動器「X Series」なら、全てのバイタルサインを測定することが可能です。
✓プリントアウト機能付き
⇒心電図波形は、ボタンを押した後の30秒間を自動印刷してくれます。印刷ボタンのみだともう一度、押さないと永遠と波形出ししてくれます。
これだと不必要な印刷までしてしまうため、ロール紙の消費率も高まってしまいます。それを避けて、かつ必要な部分だけ印刷できるのは、救急隊として“役立つ機能”です。
✓胸骨圧迫のフィードバック機能を搭載
⇒「Real CPR Help」機能を搭載しているため心肺蘇生中の速度や深度をリアルタイムで救助者にフィードバックしてくれます。
下記は「Real CPR Help」機能の解説動画です。
【デメリット】
✓日本光電製と比較すると重量がある
⇒実際に使用してみると重量は重い印象です。付属物などがあって持ち運ぶにしても、狭隘な場所では現場のものを壊してしまう危険を感じたこともありました。
現実的な対応として、同社製品の自動体外式除細動器「ZOLL AED Plus」を携行して現場へ持っていき、除細動パッドを貼付して判断を行っていることがほとんどでした。
✓プリントアウトされる部分がイマイチ
⇒これは使用者目線ですが、波形印刷が出される部分がサイドにあることがデメリットに感じます。なぜかというと、印刷物を取り出しにくい・印刷紙の取り換えが面倒になるからです。
基本的に本体のサイド部分にはSPO₂センサーや血圧計などの“付属コード”が取り付けられています。
下記の写真を見ていただくとわかるかと思いますが、収納ケースをサイドに取り付けるため波形印刷されます。非常に邪魔なんですよね。無理に印刷紙を引っ張るとキレイに切り取れません。
ですので、「なぜサイドに波形出し部分を取り付けたの?」と思ってしまいます。
自動体外式除細動器「ZOLL AED Plus」
携帯型モニタリング機能付除細動器「X Series」
フィリップス ハートスタート MRx
特長
- 半自動除細動器の先駆者
- 全国的に普及
実際に使用した救急現場での生の声
【メリット】
✓使いやすい
⇒個人的な“慣れ”の部分もあるが、使いやすい形状をしています。
実際の使用者目線で言っても、ディスプレイの大きさ、誘導切り替えボタン、AEDモードとモニターモードの切り替えといった部分を一目で把握しやすい形状になっています。
波形出しされるプリンタ・ドアもフロント部分に設計されています。ZOLL製「X Series」と比較して扱いやすかったです。
【デメリット】
製品販売が今後不明瞭
⇒これは、救急救命士として消防署に務める息子の話ですが、実際にMRxのバッテリー類に関しては使い捨てしか納品できていないとのことです。
つまり、今後は商品の製造販売は実施していかないことを示唆しています。
今後も継続して使用していくことを考えると故障や付属製品が納品されないなど、さまざまな不具合が予想されます。
✓海外製品のため不具合が発生した場合に早期対応は困難
⇒フィリップスは海外の会社です。修理や保守点検については海外に持っていき、そこで行われています。
つまり、早期対応は困難になるのです。
実際に本機に不具合が発生した際は数か月時間を要したという話も聞きました。
そういった際は代替機で対応はするのですが、それでも全ての機能が搭載されていない機種がくる(12誘導心電図ケーブルは接続できない)など、本機と同等ではないケースもあります。
半自動除細動器とAED(自動体外式除細動器)の違い

結論は波形確認できて、手動でも心電図解析操作ができるかどうかです。
表にして確認すると理解しやすいかと思います。
除細動の判断 | 心電図解析操作 | 対象者 | |
自動体外式除細動器 | 自動 | 自動 | 一般人 |
半自動除細動器 | 自動 | 任意で手動も可 | 医療従事者 |
上記のような違いがあります。
但し、AED(自動体外式除細動器)の中にはモニター表示される機種も存在します。ですので、全ての機種において当てはまらないことも認識しておきましょう。
AED(自動体外式除細動器)は一般市民が使用者の対象となっていますが、消防隊員も使います。
なぜなら、救急救命士以外の消防職員は医療従事者に含まれないからです。
ですので、消防車にもAED(自動体外式除細動器)を積載しており、先着した場合にはAEDを使用するケースもあります。
AEDの代表機種
フィリップス社 AED(自動体外式除細動器) ハートスタートFRx+
半自動除細動器の代表機種
AED(自動体外式除細動器)と半自動除細動器の違いについては下記の外部リンクでわかりやすく解説しています。
AED(自動体外式除細動器)は救急車にも積載されています
救急車に積載されているAED(自動体外式除細動器)を紹介
【半自動除細動器の取り扱いについて】結論、救急隊員は一般市民と同じ位置付け

冒頭の質問の中で、救急救命士以外の救急隊員も使用できるのかという質問について解説すると、
結論、救急隊員は一般市民と同じ位置付けです。
なぜかというと、文章として半自動除細動器は記載されていないからです。
公に公表されている通知文を確認してみると
総務省消防庁から平成22年に発信された「消防機関における自動体外式除細動器(AED)の取扱いについて」には
“救急救命士は、解析のタイミングを選ぶことができる半自動体外式除細動器
を使用し、傷病者の状況に応じて解析が必要か否か及び解析可能なタイミング
であるか否かを判断して解析を行い、除細動を実施することが望ましいこと”
https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/items/01_tsuuchi.pdf
と記載されています。
一方で救急隊員については、
総務省消防庁で救急隊員の行う応急処置等の基準に記載されているのは、
自動体外式除細動器による除細動を行う。
https://www.fdma.go.jp/laws/kokuji/post95/
と記載されています。つまり、半自動除細動器の使用について何の記載もないのです。
根拠となる条文がないのであれば、“公に使っても大丈夫”とは言い切れませんよね。
とはいえ、AED(自動体外式除細動器)が現場になかった、救急車内で急変したといったケースではそんなことも言っていられないかと思います。
ですので、使用については
グレーゾーン
と言えます。
(確立した回答ができないことは申し訳ないです。)
AEDの基礎知識のおさらい【除細動適応となる波形】
AED(自動体外式除細動器)、半自動除細動器が大切なのはわかった。
でも、使い方もなぜ行う必要があるのかも理解していないと実施する意味はありません。
その基礎部分のおさらいは下記の記事で解説しています。
まとめ:命を救うために必要な除細動器【一般人も救急隊員も学ぶ必要あり】
半自動除細動器は救急車内に積載されて、AED(自動体外式除細動器)よりも汎用性は高い救急資器材です。
救急隊員は、これから救急現場へ出動していく中で、こういった知識があるとないとでは実施していく処置・判断の根拠が高まります。
つまり、自分の行うことに根拠を持って活動できるわけです。
これは、自分を守ることにもつながるので非常に大切です。救急隊員として、今後も現場へ出動し続ける以上、そういったリスクマネジメントもできるように考えておくことは重要ですよ。
今回は以上です。おわり。
コメント
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