子どもの成長を支える、やりがいのある保育士の仕事。しかし、「給料が安い」という現実に悩んでいる方も少なくないでしょう。
もしかしたら、周囲の心ない言葉に傷ついた経験があるかもしれません。
結論から言うと、保育士の給料は「安くて当たり前」ではありません!
国は保育士の待遇改善に力を入れており、給料は上昇傾向にあります。しかし、他の職業と比べると、まだ給料が低いと感じる方もいるのが現状です。
この記事では、保育士の給料事情について徹底解説します。

元保育士で、異業種転職で年収アップを実現した私が、実体験も交えながら、下記の内容について詳しくお伝えします。
【保育士の給料はなぜ安い?】7つの誤解と真実
保育士の給料が安いとされる背景には、様々な誤解や固定観念が存在します。
以下では、代表的な7つの誤解を事実に基づいて検証していきます。
- 「スキルが低い仕事」という誤解
- 「保育士資格は誰でも取れる」という誤解
- 「学歴に関係なく働ける」という誤解
- 「利益を追求しない仕事」という誤解
- 「社会的評価が低い」という誤解
- 「非正規雇用が多い」という誤解
- 「女性の仕事」という固定観念
1. 「スキルが低い仕事」という誤解
保育士は単なる「お世話係」ではありません。実は、子どもの命と成長を支える高度な専門職なのです。その専門性は以下の7つの分野に及びます。
専門分野 | 主な業務内容 |
---|---|
1. 発達支援の専門家 | ・発達心理学や児童福祉の知識活用 ・個別の発達段階に合わせた保育計画作成 |
2. 教育計画のスペシャリスト | ・年間・月間・週間の指導計画立案 ・子どもの反応を見て計画を調整 |
3. 安全管理のプロフェッショナル | ・事故防止対策の実施 ・感染症予防と衛生管理 ・アレルギー対応 |
4. 保護者支援の相談役 | ・成長記録と情報共有 ・子育て相談への専門的アドバイス |
5. 救急対応の即戦力 | ・応急処置や心肺蘇生の実施 ・災害時の避難誘導 |
6. 特別支援教育の実践者 | ・発達障害児への個別支援計画作成 ・専門機関との連携調整 |
7. チームケアのコーディネーター | ・職員間の連携促進 ・行事運営の統括 |
保育士資格の取得には、養成施設で1800時間以上の学習が必要です。また、保育士試験の合格率は約29.9%(2023年度)と非常に低く、高度な専門性が求められることを示しています。
2. 「保育士資格は誰でも取れる」という誤解
保育士資格を取得するには、厳しい試験と専門的な教育が必要です。
- 指定保育士養成施設での専門教育:2年以上かけて保育の専門知識と技術を学びます。
- 難関な国家試験:9科目の筆記試験と実技試験があり、合格率は約30%です。
このように、保育士は高度な専門性が求められる国家資格なので、「給料が安くて当たり前」という考えは間違いです。
3. 「学歴に関係なく働ける」という誤解
保育士の資格は高卒でも取得できますが、保育現場では大学や短大での専門教育が重視されています。
保育士には、次のような専門知識が必要です。
- 保育学、児童学、心理学、教育学の知識
- 保育実習の経験
- 研究を通じた専門性
保育士は専門職であり、それに見合った待遇が必要です。保育現場でもこの専門性への理解が深まり、大卒保育士の採用が増えています。
4. 「利益を追求しない仕事」という誤解
保育園の収入は主に公費と保育料で成り立っています。そのため、一般企業のように利益を追求することは簡単ではありません。
しかし、だからといって保育士の給与が低くても仕方がないというわけではありません。
保育園の収入源は、大きく分けて3つあります。
- 公費(補助金):国が決めた「公定価格」という基準に従って、保育園の規模や保育時間に応じて支給されます
- 保育料:市区町村が保護者の収入に応じて設定した料金です
- その他:延長保育料や教材費などの追加収入があります
最近では企業主導型保育所が増えており、効率的な運営と収益性の両立を目指す動きが出てきています。このような変化によって、保育士の待遇も良くなることが期待されています。
5. 「社会的評価が低い」という誤解
保育士は子どもの命と成長を支える専門職です。社会的評価は長年、十分とは言えない状況でしたが、近年は見直されています。
具体的な変化として、以下のような点から保育士の重要性が認識されています。
- 待機児童問題: 保育士不足が社会問題となり、専門職の価値が見直されました。
- 子どもの福祉: 貧困や虐待など、子どもを取り巻く問題に対応する専門家として注目されています。
- 教育政策: 幼児教育・保育の無償化で、教育者としての価値が広く認知されました。
こうした変化から、国や自治体は給与引き上げと労働環境の改善を進め、専門職としての評価は向上しています。
6. 「非正規雇用が多い」という誤解
厚生労働省の調査によると、保育所(保育所型認定こども園を含む)では正規職員が74.6%、非正規職員が25.4%となっています。
この状況を更に改善するため、各自治体では正規職員の採用を促進する補助金制度や、非正規から正規への転換支援制度を設けています。
具体的には、東京都では「東京都正規雇用転換促進助成金」、大阪市では「大阪市保育士等正規雇用促進事業補助金」などの支援制度が整備されています。
【出典】
7. 「女性の仕事」という固定観念
保育士は以前「保母さん」と呼ばれていましたが、現在は性別を問わない専門職として確立しています。厚生労働省の調査でも、男性保育士の数は着実に増加しています。
厚生労働省「令和4年社会福祉施設等調査」によると、保育所(保育所型認定こども園を含む)の男性保育士は4.6%です。
男性保育士が増えることで、保育現場では新しい視点や多様なスキルを活用できるようになりました。

男性保育士は、子どもたちに多様なロールモデルを提供し、体を使った活発な保育活動を展開できる上、新しい視点での保育アプローチを可能にしています。
【保育士の給料の実態】本当に安いの?平均年収・手取り・地域別・年齢別データで徹底比較
保育士の給料は、他の職業と比べて本当に低いのでしょうか?最新のデータをもとに検証してみましょう。
保育士の平均年収(2023年)
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均月給(きまって支給される現金給与額)は約27万7,200円、年間賞与その他特別給与は約74万1,700円となっており、これらを合計した年収は約406万8,100円です。
年齢別に見ると、20代では年収は330万〜370万円台、30代で380万〜430万円台、40代以降にはさらに上昇し420万〜460万円台という水準です。経験や昇進が収入に大きく影響しており、役職や長期勤続による収入アップが見られます。
他職種との比較
厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者(常用労働者)の平均月収(きまって支給する現金給与額)は330,400円で、これは過去最高値となっています。
一方、保育士の平均月収は約277,200円、年間賞与等は約741,700円で、年収換算すると約4,068,100円です。
これを比較すると、保育士の月収は全職種平均より約5.3万円低く、年収に換算すると約36万円ほど少ない計算になります。
ただし、これらはあくまで全国平均の数値であり、地域差や施設形態、勤続年数、スキルの有無などによって収入は大きく異なる場合があります。
地域別の給料格差
保育士の給料は、地域によって大きな差があります。
都市部は給料が高い傾向にあり、特に東京都や神奈川県などの首都圏では、高い水準の給与が期待できます。
一方、地方では、保育士の給料が低い傾向にあり、地域間の格差が課題となっています。
【都道府県別 保育士の平均年収ランキング(2023年)】
順位 | 都道府県 | 平均年収(万円) |
1 | 東京都 | 486.8 |
2 | 神奈川県 | 475.1 |
3 | 大阪府 | 454.3 |
4 | 京都府 | 451.7 |
5 | 千葉県 | 444.4 |
… | … | … |
43 | 宮崎県 | 347.1 |
44 | 青森県 | 339.8 |
45 | 秋田県 | 338.9 |
46 | 沖縄県 | 336.2 |
47 | 岩手県 | 328.1 |
出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 職種DB第1表」より作成(企業規模10人以上)
この表から、東京都の保育士の平均年収が最も高く、岩手県が最も低いことがわかります。
上位の都府県と下位の都府県では、150万円以上の年収差があります。
都市部と地方の格差が顕著に現れています。
施設形態別の給料格差
保育士の給料は、施設形態によっても異なります。
一般的に、認可保育所や認定こども園は、国や自治体からの補助金が手厚いため、給料が高い傾向にあります。
小規模保育所や企業主導型保育所は、運営の自由度が高い反面、補助金が少ない場合があり、給料が低い傾向にあります。
公立保育所の保育士は、地方公務員として扱われるため、給料や福利厚生が安定しており、地域によっては私立保育園よりも高い給与水準となることがあります。
施設形態別 保育士の平均年収比較(推定)
施設形態 | 平均年収(万円) | 備考 |
公立保育所 | 400~500 | 地域、経験年数による |
認可保育所 | 380~450 | |
認定こども園 | 380~450 | |
小規模保育所 | 320~400 | |
企業主導型保育所 | 350~420 | 企業規模、福利厚生による |
認証保育所 | 360-430 | 東京都の場合 |
院内保育所 | 350-430 | 病院の規模による |
ベビーシッター | 250-400 | 働き方による |
注意:この表は、公的な統計データが存在しないため、複数の求人サイトや業界関係者の情報を基にした推定値です。あくまで参考としてください。
年齢・経験年数別の給料
保育士・年齢別平均給与(企業規模10人以上/男女計)は以下のとおりです。
年齢階級 | 月収(万円) | 賞与(万円) | 年収(万円) |
---|---|---|---|
20~24歳 | 22.9 | 45.5 | 72.9 |
25~29歳 | 25.1 | 52.8 | 82.9 |
30~34歳 | 26.4 | 39.2 | 70.9 |
35~39歳 | 28.1 | 35.2 | 68.9 |
40~44歳 | 27.7 | 31.8 | 65.0 |
45~49歳 | 28.6 | 36.9 | 71.3 |
50~54歳 | 28.8 | 32.8 | 67.4 |
55~59歳 | 30.2 | 23.8 | 60.0 |
60~64歳 | 29.5 | 14.4 | 49.8 |
65~69歳 | 26.3 | 3.7 | 35.2 |
70歳~ | 45.1 | 1.7 | 55.7 |
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」より作成
※ 年収は 月収×12 + 賞与 で算出
※ 金額は四捨五入のため合計と若干の差異が出る場合があります
年齢と経験年数を重ねるごとに、給与が上昇する傾向にあります。
高収入を得ている保育士の事例
平均年収を大きく上回る保育士も存在します。特に、以下のような要素が収入アップにつながることがあります。
1. 役職手当
- 主任保育士:月額数万円程度の手当が一般的。
- 園長:園の規模や経営状況によっては、月額10万円以上の手当が支給されることもあります。
2. 処遇改善等加算(国や自治体の制度)
- 加算Ⅰ:経験年数に応じて加算。
- 加算Ⅱ:キャリアアップ研修の修了状況に応じて加算(最大月4万円)。
- 加算Ⅲ:2022年度から開始。収入を約3%(月額約9,000円)引き上げ。
3. 地域手当
物価の高い都市部や保育士不足が深刻な地域で支給される手当。金額は自治体によって異なります。
4. 経験年数に応じた昇給
多くの保育園では、勤続年数に応じて基本給が段階的に上がります。
5. 専門性を活かした働き方
リトミック講師、英語講師、障害児保育の専門家など、特殊スキルや資格を活かすことで、高単価の仕事や副業につなげられる場合があります。
このように、役職・加算制度・地域差・経験・専門性を組み合わせることで、保育士でも平均年収を超える高収入を得ることは可能です。
保育士の給料が上がらない原因
保育士の仕事は子どもの尊い命を預かる仕事です。それにも関わらず少ない給料で働いている理由について解説します。
①公定価格があるから
保育士の給料は国が定める「公定価格」の中で決定しています。
公定価格の中には、施設の維持費なども含まれているため、職員に割り当てる割合が少ないと保育士の給料は下がってしまいます。
具体的な給料の決定方法は、以下の2つです。
- 保育の実情性
- 地域性

勤める保育園の経営状態が悪いと、保育士の給料も不安定になってしまいますね。
②歴史が浅いため安く設定されてきたから
保育士は平成23年(1999)年から始まった歴史の浅い職業です。そのため軽くみられてしまい、給料にも影響を及ぼしているのです。
例えば看護師のように、130年以上の歴史がある職業であれば、給料制度も確立されます。しかし保育士の仕事は、元々「保母」が波及した仕事でした。
「子育ての延長」としてみられてきた背景があり、それが給料としても反映しています。
③地方と都心の格差があるから
下記の表を見てください。
首都圏および人口の多い県 | 地方 | |
月給26〜30万円台 | 神奈川県 東京都 京都府 大阪府 埼玉県 千葉県 茨城県 | 青森県 石川県 |
月給23〜25万円台 | 栃木県 群馬県 山梨県 兵庫県 福岡県 愛知県 | 奈良県 岡山県 岐阜県 富山県 北海道 香川県 鹿児島県 鳥取県 山口県 福井県 宮崎県 愛媛県 熊本県 岩手県 高知県 和歌山県 佐賀県 宮城県 三重県 福島県 秋田県 |
月給20〜22万円台 | 新潟県 広島県 | 長崎県 沖縄県 大分県 鳥取県 滋賀県 長野県 山形県 |
地方と首都圏や人口の多い県とで、年収に違いが生じています。そのため、地方で働いている人は、「給料が低い」と感じているのです。
しかし例えば、保育士の仕事を地方ではなく都心で行えたら、単純に収入はアップできるでしょう。

あなたの環境をもう一度振り返り、保育士として都心の保育園に通えるか検討してみましょう。
給料が安いのは当たり前に対する改善策
①転職する(働く自治体を変える)
働いていた職場がイヤだっただけで保育士の仕事自体は好きという方は、他の場所で保育士として働きましょう。
実際に働く場所を変えただけで、給料が大幅にアップした方も多いですよ。
保育士六年目 転職して新た保育園へ。
ここも以前とさほど変わりません。
あ、年収は50万くらいアップしました。
新卒ではありませんが新規採用で0才児1人担任です。
X(旧Twitter)

特に人間関係も上手くいっていない方は、職場を変えるだけで、給料も働きやすさも大きく変化します。
②昇格する
収入を増やすため、なるべく環境は変えたくない方は昇格しましょう。しかし保育園の中で、そのポジションにつける人は限られています。
たとえば、保育園のリーダーを勤める役職の就くクラスは、円の規模によりますが、正職員全体の20〜30%が一般的です。

つまり座れる椅子は限られています。
仮に自分より先輩の保育士がまだ園に多く在職していたなら、昇任は狭き門となってしまうでしょう。

逆に若い保育園なら昇任のチャンスはありそうですね。
③キャリアアップ研修を受ける
キャリアアップ研修制度を取り入れている保育園が中にはあります。キャリアアップ研修とは、「保育士処遇改善等加算II」のことです。
研修を受けるメリットは、保育士のスキルをアップさせる研修を修了することで、キャリアアップに応じた処遇改善手当を受け取れます。
具体的な手当の内容は以下です。
保育士の年収 | 事務員の年収 |
副主任保育士 | 月額最大4万円 |
専門リーダー | 月額最大4万円 |
職務分野別リーダー | 月額5,000円 |
国が実施しているキャリアアップ研修制度で、給料をアップさせるのも1つの選択肢です。
参考:厚生労働省
④異業種に転職する⬅︎最短で給料アップはこれ!
ここまで紹介してきた保育園の中でスケールアップする方法は、1つの選択肢として知っておくのはよいですが、おすすめできません。なぜなら年収アップまで時間がかかってしまうからです。

そこでおすすめなのが、異業種転職です。
保育士と異なる職種への転職を目指すのが、最短で年収アップさせる効果的な方法です。私自身の経験からお伝えすると、転職して保育士のときの年収から100万以上の年収アップに成功しました。
年収は働く職種によって大きな違いがあります。
保育士の年収 | 事務員の年収 |
約391万円 | 469万円 |
【参考】
【保育士の給料安いは当たり前?】よくある質問
保育士の今後のニーズは?
保育士のニーズは今後も高まる可能性は高いです。有効求人倍率をみても保育士の平均は3.12倍です。
全職種平均は1.44倍なので、その差が大きいのがわかりますね。
今後も共働き世帯は増えているため、「出産後も働きたい」、「収入面で働かないと厳しい」などの理由もあり保育所のニーズはさらに高まるでしょう。
【参考】
保育士の手取りは低いですか?
保育士の年収 | 給与所得者の年収 |
406.8万円 | 460万円 |
保育士の平均年収は約406.8万円(月収:約27.72万円/賞与:約74.17万円)であり、給与所得者全体の平均年収(約460万円)と比べて、年間所得は約53万円低い状況です。
この差からも、保育士の給与が一般平均と比べてやや低めにとどまっていることがうかがえます。
【保育士の給料安いは当たり前?】まとめ
保育士の給料は、令和6年賃金構造基本統計調査によると平均年収が約406.8万円で、全職種平均の約460万円よりもおよそ53万円低い水準です。
この背景には、公定価格制度による給与上限、職業の歴史的な低評価、そして都市部と地方の地域格差といった構造的な要因があります。
しかし、役職手当や処遇改善等加算、地域手当、専門スキルの活用、副業や転職などによって年収を引き上げることは可能です。実際、都市部や公立園では高水準の給与が支払われるケースも多く見られます。
今後も保育士の需要は高まる見込みで、待遇改善の動きも進んでいます。「安いのが当たり前」という固定観念にとらわれず、スキルアップや働く環境の選択によって、より良い待遇を得ることは十分に可能です。
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